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中小法人等の法人税法上の特例

2018年05月01日
税務・会計情報

 今年も3月決算5月申告の法人の申告時期がやってきました。
国税庁がかなーり前に発表した決算期別の普通法人数も他の月と比べ断トツに5月申告が多いです。
どの会社も「ちょっとでも節税のため!」と日夜頭を悩ませていると思います。

 今回は前回書いた『中小法人等と中小企業者等について』に絡め
法人税法上、自社が中小法人等・中小企業者等に該当した場合にどういった優遇措置があるのか紹介していきたいと思いますが、長くなるため今回は中小法人等に絞って記載します。
なお、例によって誰でもイメージしやすいように極力省いて書いていますのでご了承ください。

中小法人等に該当した場合の主な法人税法上の特例(平成30年4月1日現在)
① 軽減税率
② 貸倒引当金の損金算入の特例
③ 交際費の損金算入限度の特例
④ 欠損金の繰越控除(損金算入限度の特例)
⑤ 欠損金の繰戻還付の特例

まずは簡単に表でまとめてみました。

 

 

①軽減税率について
 平成30年4月1日以後事業年度開始の法人税率は23.2%と設定されていますが、
中小法人等に該当した場合、所得金額が800万円以下の部分についての法人税率は15%となっています。(800万円を超えた部分については23.2%)
単純に税率が低く設定されているため、節税効果は高いと言えます。

②貸倒引当金の損金算入の特例について
 原則、中小法人等以外は法人税法上、貸倒引当金を損金の額に算入することは出来ません。
ただし中小法人等に該当すれば、一定額については損金算入が認められます。
つまりその分所得の金額を少なくすることができ、節税に繋がります。
同じ引当金でも、賞与引当金や退職給与引当金等は損金の額に算入されません。
これは、法人税法上債務は確定しているものでなければならず、未確定の引当金については本来なら損金の額に算入されるべきものではないという考えからです。
例外として貸倒引当金が認められています。

③交際費の損金算入限度の特例について
 中小法人等以外の場合は当期に生じた接待飲食費の50%のみが損金の額に算入できますが、
中小法人等に該当すれば、上記と年間800万円までの交際費のどちらか有利な方を選択して損金の額に算入されます。

 例えばですが、中小法人等に該当しているA社について下記のように接待飲食費が発生したとします。
例1) 接待飲食費の額 1,000万円
例2) 接待飲食費の額 1,700万円

 例1の場合は1,000万円の50%である500万円と800万円とを比べ、800万円を損金の額に算入します。
 例2の場合は1,700万円の50%である850万円と800万円では、850万円を損金算入の限度とした方が法人税法上有利となります。
つまり接待飲食費の額が1,600万円を超えた場合のみ、中小法人等の損金算入限度の特例を選択しない方が有利となります。

 
 ちなみに接待飲食費とは簡単に言うと下記のものです。
交際費に該当するもののうち、飲食その他これに類するもので参加者一人当たりの支出額が5,000円超のもので領収書や参加人数等一定の書類を保存しているもの。
ただし、自社の特定の役員や従業員のみで飲み食いしたものについては接待飲食費には該当せず(交際費には該当します)、あくまで外部の人を交えて飲食したものが接待飲食費となります。

④欠損金の損金算入限度の特例
 当期は黒字で所得が発生し税金がかかりそうな場合でも、前期以前に赤字となり欠損金が生じている場合には、その欠損金額を当期の黒字所得に当て込んで所得金額を減額させる制度です。
中小法人等以外の場合、所得金額の50%(平成30年4月1日以後開始事業年度より)までが限度になりますが、中小法人等であれば欠損金について、当期の所得金額がゼロになるまで、損金に算入することができます。
ただし、その法人が更生手続開始や新設法人に該当する等の一定の要件に該当すれば中小法人等以外であっても所得金額がゼロになるまで損金の額に算入することができます。

⑤欠損金の繰り戻し還付の特例
 中小法人等に該当した場合のみの制度で、前期が黒字で税金を納めていたけども、当期が赤字になった場合に、前期納めた税金をいくらか還付してもらう制度です。
納税資金が足りない場合や将来の設備投資に現金が必要等に適用すれば、その分資金不足が解消されるでしょう。