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家族的経営の崩壊

2011年11月24日
所長のつぶやき

NHKのドラマ「神様の女房」は、経営の神様といわれる松下幸之助の夫人むめのさんをモデルに、松下電器創業期を中心に経営者夫人による社員に対する目配り、気遣い、教育の奮闘努力を描き、その求心力が松下の家族的経営に結実して戦中・戦後の混乱期に襲った会社の危機を救い、今日のパナソニックを築く基礎となったという心温まるドラマでした。

その感動が治まる間もなく、液晶不況によるパナソニックの一部工場閉鎖と2000人解雇が報じられました。
その以前にも傘下に収めた三洋電気系の事業所、従業員を次々と大胆に整理して、合理化を図ってきました。
このギャップ。どこから来るのだろうか。

会社の側から言わせれば、製造・販売ともグローバル化した家電の世界で、従業員の2千や3千、中国やインド、東南アジアではすぐにでも採用できる。赤字を垂れ流している国内の工場をいつまでも続けていたのでは会社が立ち行かない。わが社は世界のパナソニックである。
社名をカタカナにしてから可笑しくなったのかしら。そう言えば首切りという恐ろしい言葉は死語で、今ではリストラといい、その数の大きさは経営者の勲章であり、その会社の株価を左右するそうです。

船場の旦那はん、御寮はんの時代は遠く、雇用者夫妻と従業員の間には、疑似家族的な心の交流は消え、単なる雇用関係があるのみである。「ウチは家族的経営です」などという社長は、自分は取締役社長、奥方は社長取締役の専務であるなど、自らの親族を役員に配しているだけで、大小を問わず、会社を私物化している。これは家族的経営ではなく家族経営である。社員はこの実態を見逃さず、社長を「オヤジ」などと思わないし、口にもしない。

企業における家族的経営の崩壊の深奥には、学校にあっては師弟関係の崩壊、家庭にあっては家族関係の崩壊があるのかもしれない。これらの人間関係を封建的とか、時代遅れとかの言葉で片づけるのは簡単である。荒れる学級、わが子の虐待、DV、一人っ子で兄弟はなし。幼少の頃から愛情に満ちた人間関係に恵まれないままに育ち、長じては進学・就職・結婚を機に独立。3世代、4世代の同居など都会の住宅地では滅多に見られない。

こうした環境で育った経営者や従業員が、会社を疑似家庭に見立て、社長をおやっさん、上司・先輩をアニキ・アネキ、従業員を子供、部下・後輩を弟・妹として、日常の仕事を通じて慈しみ合う感情を抱くのは所詮無理だろう。会社は家庭ではない。会社内の人間関係には、疑似家族的な関係は不要である。
経済的に運命をともにする一艘の船に乗り合わせたクルーとして、それぞれの持ち場の仕事に力を注ぐなかで、上司・部下、同僚、先輩・後輩の秩序が出来上がり、人間関係が形成される。そのようなニューファミリーを期待するのは無理だろうか。