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御社の税金(均等割)安くなるかも?(無償減資について)

2018年08月01日
税務・会計情報

「今期の決算ですが、赤字(もしくは、黒字ですが、過去の損失があるため所得0円)
の為法人税は発生しません。ただし赤字でも納税が必要な均等割7万円の納付だけ
お願いします。」

このセリフを私は、この業界に入って何度お客様に言ったでしょうか…。
法人の税金には、大きく分けて2種類あって、利益に対する税金と利益と関係なく
発生する均等割というものがあります。

 

① 均等割とは?
 均等割とは、事務所、事業所または寮等の所在する府・県、市ごとにかかります。
要するに管轄内に事務所等があれば、一定の税金を払わなければいけないものです。
法人の規模(資本金や従業員数)によって、税額が異なります。(自治体間でも)
冒頭のセリフ7万円というのは、本社が大阪市で、資本金が1千万円の法人の場合で、
大阪府2万円、大阪市(従業員50人以下)5万円の計7万円という内訳なのです。

もし先ほどの法人が1円でも増資し、資本金が1千万円超となれば、規模区分が変わり
大阪府7万5千円、大阪市(従業員50人以下)13万円の計20万5千円で13万5千円も
均等割が変わってくるのです。
そしてその法人が全国にいくつも拠点があれば、その10倍以上も税金が変わる場合も
あり得るのです…。

全国の中小企業の大部分が資本金1千万円以下というのは、この均等割が1千万円を
境に代わるというのが大きなウェイトを占めているのではと、個人的には思っています。

大部分の中小企業は資本金1千万円以下ですが、中には2千万円や3千万円の法人もあります。
その法人が規模に見合った業績を上げていれば、均等割の負担も構わないと思いますが、
ここ数年ずっと赤字続きという法人も当然存在します。
そういった法人は、赤字ですので利益に対する税金は発生しませんが、均等割のみを
資本金1千万円の法人より毎年13万5千円も多く払っているのです。
そうなれば当然うちも厳しい状況だし、減資をして資本金を1千万円にして均等割を
減らしたいと思いますよね?

 

② 均等割を減らすには?(従来)
 例えば、以下の資本金2千万円の法人で、繰越利益剰余金のマイナス(=過去の赤字の
蓄積)と資本金と振り替える無償減資をした場合、会計上は以下のようになります。

資本金が1千万円に減ったので、均等割が変わるかといえば、変わりませんでした。
その理由は、法人住民税の均等割の区分は、法人税法上の資本金等の額(法人税法2条16号に定める「資本金等の額」であり、法人税法施行令8条に具体的な金額を定めています。)で決められており、会計上は資本金が1千万円と減りましたが、法人税法上の資本金等の額は2千万円(ややこしいので説明は省略)のままでしたので、均等割は変わりませんでした。

そのため均等割を下げるためには、有償減資=株主に実際資金を返還する
方法しかありませんでした。ただ赤字に苦しむ法人は、当然資金繰りも厳しいため
その対策はとれず、高い均等割を払い続けるしかありませんでした。

 

③ 無償減資が認められる税制改正が成立
 それが、平成27年度の地方税法の改正で、平成27年4月1日以後に開始する事業年度に
おいて、上記の無償減資の処理が認められることになりました。(少し前の話ですが…)

【改正前】
事業年度末時点の「資本金等の額」で判定
【改正後】
① 事業年度末時点の「資本金等の額」と「資本金と資本準備金」と比較して、
 いずれか多い金額を基に判定

② 「資本金等の額」は、無償減資等による以下の表の調整が必要


(注) ①資本金又は資本準備金の額を減少し、その他資本剰余金として計上
    ②その他資本剰余金からその他利益剰余金の欠損填補の処理した金額で、①の処理
    から②の処理までは、1年以内に行う必要があります。

 改正後の②の取り扱いにより、無償減資が認められ、上記に掲げた事例でも均等割を
下げることが可能となりました。
逆に以前は、自己株式の取得により資本金等の額が減少し均等割が減額される法人が
ありましたが、改正後の①の取り扱いにより均等割が高くなる法人もあります。

ただし規定の適用がある場合には、無償増減資があったときの株主総会議事録等を
添付する必要があります。

 

④ 登記手続も必要
 改正で無償減資が認められた為、均等割を減らすことが可能となりましたが、
経理上の処理だけでなく、登記の手続も当然必要です。
登記にかかる手数料等は発生しますが、均等割の2~3年分削減できれは十分元は
取れると思います。登記費用等は、司法書士さん等にご確認ください。

ただし「剰余金による損失の填補」は、株主総会の決議や債権者保護手続が必要となる
場合があるため、法務上の手続のスケジュールを確認しましょう。

決算期直前に手続きを開始し、減資の登記が事業年度末に間に合わなければ、
均等割は減額されませんので、無償減資の手続きをされる場合は、時間に余裕を
もったうえで手続をしてください。

 

 今回の文章はわかり易くするため、説明を簡略化していることをご容赦ください。
何かご不明な点がございましたら、当事務所の職員にお尋ねください。