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小規模宅地等の特例を巡る諸問題

2012年02月13日
税務・会計情報

小規模宅地等の特例は、昭和58年に創設時に比して経済状況やライフスタイルの変化により納税者と課税庁との見解の相違による争訟が増加している。

老人ホームの居住と従前の居住用宅地に対する小規模宅地等の特例の適用問題もその一つである 。
しかし、相続税法において明文化されておらず、質疑応答集による事例と回答があるのみである。

近年、我が国における少子高齢化の進行は深刻な社会問題となっている。

高齢化社会の進行により、介護問題も顕在化している。
核家族化により高齢者の在宅介護の割合も減少し、医療機関において死亡する者の割合は年々増加しており昭和51年に自宅で死亡する者の割合を上回り、更に近年では8割を超える水準となっている(「人口動態統計」(厚生労働省大臣官房統計情報部)資料より) 。

また、老人ホームの運営形態も多岐にわたる。

しかしながら、現行において当該問題の判断基準は国税庁が示す質疑応答事例による以下の(1)~(4)と各納税者の事実認定に委ねられている。

(1)被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったものと認められること。

(2)被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。

(3)入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。

(4)その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。

老人ホームに入所した場合に被相続人が不在となっている自宅敷地が小規模宅地等の特例の対象となる居住用宅地等に該当するか否かの判断は介護の必要性にあると思われる。

つまり、質疑応答事例に示されている病気治療により入院した場合の判断基準によると、相続開始前に医療機関に病気療養のために入院していたような場合には、病気が治った時は入院前に居住していた自宅戻るのが通常であり、一時的な事情による不在であるから被相続人の生活の拠点はなお自宅におかれているものされる。

しかしながら、老人ホームの入居における当該特例の適用は、老人ホームの形態によって当該特例の適用が左右される。

現実には、介護が必要であっても、必ずしも希望する医療機関や老人ホームへ入所できる訳ではない。
やむなく、質疑応答事例で否定されているような所有権取得型の老人ホームに入居せざるを得ない場合もある。

小規模宅地等の特例の立法趣旨は、事業又は居住の用に供されていた宅地等のうち最小限必要な部分については、相続人等の生活基盤維持のために欠くことができないものであり、その処分について相当の制約を受けるため、評価上減額するというものである。

今後、高齢化が加速するであろう我が国において、入所した老人ホームの形態によって当該特例の適用が左右される現行の制度には問題があるのではないかと思われる。