国際租税という分野にあっては、どこの国で課税するかというテーマが大前提となってくる。
恒久的施設(PE)の存在はその課税権を左右することになる。
所謂「PEなければ課税なし。」である。
特に、芸能人の所得は、その活動の期間に比して報酬が高額なことが多く、また短期間の滞在中に海外での活動から得た所得を居住地国で把握することが困難であり、課税漏れが生ずる可能性が高い。
また、芸能人が法人を設立し法人形態によって興業を行う場合には、海外の活動についてはPEが存在しないことになり先述の「PEなければ課税なし。」の原則に従って源泉地国での課税を回避が行われやすい。
そのため、大部分の租税条約は芸能人の所得が法人に帰属する場合には、源泉地国所得に対して源泉地国で課税漏れが生じないよう芸能人の役務提供そのものを恒久的施設とみなす(「みなしPE」)等の特例を設けている。
具体的な既定の適用については、まず国内法の適用を検討し、更に、租税条約による修正の有無を検討した上で判断することになる。
当該芸能人法人等のの所在地国と我が国との租税条約の締結の有無等の複雑な条件が絡み合うため実務においては慎重な判断が求められる。