給与所得者は、給与等の収入金額から、所謂サラリーマンの必要経費である給与所得控除額が控除されることは、税務と無関係の方でもご存じの方が多いと思います。
しかし特定支出控除についてご存知の方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
この制度が開始されてから、この制度の利用者は毎年10人未満であると言われています。
捻じれに捻じれた国会により、未だに確定しない平成23年税制改正法案ですが、その中の一法案として改正されるはずだった特定支出控除についてご説明いたします。
特定支出控除とは特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超える場合において、その超える部分の金額を確定申告により給与所得控除後の金額から差し引くことができるとされている制度です。(所得税法57条の2①)
この特定支出とは、給与所得者が支出する次に掲げる支出のうち一定のものです。(所得税法57条の2②)
1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出。
2 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの。
3 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出。
4 職務に直接必要な資格(一定の資格を除きます。)を取得するための支出。
5 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの。
ここまでが現行法による特定支出控除の概要です。
ここからは、改正されるはず?の特定支出控除の特例について説明します。
平成23年税制改正大綱によれば、給与所得控除に上限を設けることに併せ、特定支出控除を使いやすくする観点から特定支出の範囲を拡大するとともに、特定支出控除の適用基準を見直すこととするとされています。
これによると以下の費用が特定支出の範囲に追加されます。
1.職務の遂行に必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費。
2.職務に関連のある書籍、定期刊行物の購入費及び制服等の被服費。
3.職務に通常必要な交際費。
4.職務に関連のある団体に対する会費等の経費。
なお、控除額には一定の証明書類の添付が必要とされ、限度額が設けられることになるでしょう。
税理士事務所に勤務する職員には、専門学校に通い税理士資格取得を目指している人が多く、私も多分に漏れずその一人であります。
民主党が政権与党としての実行力と統率力を発揮し、この法案が成立した暁には、宝くじに当選するのと等しいくらいの確率の人にしか利用されていないこの制度を利用してみたいものです。