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グループ税制

2011年07月29日
税務・会計情報

今年は法人税法を受験するので自分の論点整理も兼ねて、それにちなんだ記事を書きたいと思う。
法人税法受験における今年の目玉は何といっても「グループ税制」である。

これは100%出資関係がある企業グループ全体を一法人と考えるものであり、一例としては、グループ内での
会社の規模や届出に関係なく強制適用であり、いろいろな項目に影響してくることから法人税計算において根
本的な改正だと思うが、当該税制ができた背景や細かい影響についてはここでは割愛し、僕が興味を持った
うちの1つを以下に紹介する。

 

◆法人による完全支配関係がある内国法人間の寄附金の損金不算入、受贈益の益金不算入

寄附金とは、金銭その他資産の贈与や経済的利益の無償の供与のことで、ざっくり言うと企業グループ内で
資金等の移動や無利息貸付をしても税金はかかりませんよ(税金計算上の損益からは除外しますよ)という
制度である。

これにより資金等の融通は(少なくとも税金や利息を気にする必要がなくなったという点で)結構しやすくなったように思う。

ここでのポイントは3つある。

(1)「法人による」完全支配関係に限っている。

つまり同一の個人オーナーが所有する会社間の資金移動等は、従来どおり贈与・受贈として取り扱われる。
受取側は受贈益(税金の対象である所得を構成)を認識しなければならず、資金融通の効果が損なわれる。
さらに贈与側でも通常の寄附金として一定の損金算入限度額を超える部分が損金とならない。
グループ全体から見た場合は、その超える部分だけ課税の対象が増えることとなる。
例えば、贈与側の会社が資本金等の額1億円、所得金額1,000万円の場合、損金算入限度額は年25万円
程度である。よって、これを超える資金移動・利益供与をするときは、オーナー(株主)が個人か法人かでグループ全体の税負担も変わってくることに留意されたい。

 

(2)「内国法人間」に限っている。

例えば、外資系の日本法人がその親会社から送金してもらった場合は普通に受贈益課税され、逆に、海外にある子会社に送金した場合には寄附金扱いを受ける(=国外関連者に対する寄附金なので全額損金算入されない)。踏んだり蹴ったりである。ただし、同一外資に所有されている日本法人間(内国法人間)の資金移動については問題なく適用され、損益は発生しないこととなる。つまり、直接の相手方の一方が外国法人か否かが分かれ目なのである。

 

(3)あくまで税金計算上の取扱いである。

別法人に対する資金の移動は、企業会計上(決算書上)は寄附金・受贈益として費用・収益計上するしかない(返済する予定があれば貸付・借入とすればよいが)。税金計算上損益に影響しないからといって幾らでも送金してしまうと、決算書において費用の額が大幅に増え、利益や純資産が大幅に減ってしまうこととなる。
書きながら気付いたが、税務上においても、贈与法人の利益積立金額が減少するので、株主である法人では株価減少の税務調整(別表5(一)のみ。「寄附修正」)が必要である。(逆に、受取法人の株主である法人は株価増加の調整を要する。)

 

以上がポイントである。特定の個人オーナー(その親族含む)が複数会社を経営しているケースは中小企業ではよく見られるので、特に(1)に留意し、持株会社化への移行等も視野に入れつつ、より良い活用をしていきたいものである。