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相続依頼

2011年07月06日
税務・会計情報

相続税の申告を長年携わっていると色んな事例があります。その中で記憶に残っている事例を会話方式で記載してみました。

【依頼者】
おじゃまします。田中と申します。熊田精機の熊田社長のご紹介でお願いがありまして寄せてもらいました。

【税理士】
どうぞ、こちらへ
熊田精機の社長様よりお伺いしております。何か相続の事で相談という事をお聞きしていますが具体的には、どのような事でしょうか?

【依頼者】
私、大阪の九条でささやかな町工場を営んでいる田中と申します。
実は、四月に父親が亡くなりましたので、熊田社長が「相続等の手続きをきっちり行わんとえらい目になるで」とおっしゃられ、懇意にしている先生を紹介したるからと言われまして、今日寄せていただいた次第です。

【税理士】
分かりました。お話をお聞きいたします。
相続という事ですので手続きとしては、お父様の亡くなった日翌日より4ヶ月以内に準確定申告を10ヶ月以内に相続税の申告および納税等を行う必要があります。
さて、亡くなられたお父様の経歴・相続人・財産についてお分かりになる範囲でよろしいのでお聞かせ頂けませんか。

【依頼者】
父親には、娘が三人おりまして、私が長女の美智子と結婚し、養子となり父親が創業しました会社、株式会社田中鉄工所を手伝いする事になり一応専務取締役として仕事を行ってきました。また、母親は私が結婚する前に既に亡くなっていました。
父親というのは、あまり申し上げるのは、憚るのですが、仕事より遊ぶのが好きな人で、わたしが、専務という事で仕事を切り盛りするようなってからは一層その傾向が強くなり、私が会社を実質的に経営してきました。
また、家内の姉妹は各々結婚をし、次女は東京に住み、三女は現在ロサンゼルスに住んでいます。各々、株式会社田中鉄工所の経営には関わっていません。父親の財産ですが、会社の工場の土地建物と、現預金、会社の株式ぐらいと思います。
会社の株式の割合は父親が90%で残りを私と家内で持っています。

【税理士】
お話はお伺いいたしました。
お話をお伺いする範囲では、相続税法は現在では基礎控除とし5,000万円に法定相続人一人につき1,000万円が控除できると定めており、田中様の場合相続人は、4人ですので控除額は9,000万円です。その額を超えれば相続税が課税されます。
なお、死亡保険金・死亡退職金も相続税法上課税財産の範囲になります。ただし、一定の控除はあります。
さて、お父様は遺言状を作成されていませんでしょうか、また本日何か資料をお持ちでしょうか。

【依頼者】
遺言状は作成していないようです。また何を持ってくればいいのかさっぱり分かりませんので、何も持参していません。

【税理士】
分かりました。それでは必要書類を申しますので用意して下さい。

 

相続については、
まず、お父さが生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等
相続人の住民票・印鑑証明
財産債務の明細
不動産があれば固定資産税評価証明・登記簿謄本・地積測量図等
預金については、残高証明【お父さんの亡くなった日現在】
できれば過去3年以上の通帳等
株式会社田中鉄工所の決算書・申告書各三年分
葬式費用の明細・会計帳等などです。

 

準確定申告については
確定申告の資料ですが昨年と同じなら同様の資料でいいと思います。

【依頼者】
え、こら大変だ。できるかな

【税理士】
ある程度できたら、見せて下さい。手伝える事があれば行いますので。

【依頼者】
分かりました。それでは出直します。

【依頼者】
おじゃまします。先日、先生にお願いしていました件で資料を持参しました。

【税理士】
どうぞ、こちらへ

【依頼者】
先日おっしゃられた資料で揃えられた物をとりあえずお持ちしました。

会社の決算書・申告書 3年分
預金残高証明・通帳のコピー
不動産の謄本・評価証明
その他財産債務の明細
父親の戸籍謄本および我々相続人の戸籍謄本

それ以外に必要な物があればすぐに用意いたしますのでお願いいたします。

【税理士】
それでは、お預かりしまして、資料を検討し後日ご連絡いたします。

【依頼者】
お願いいたします。

【税理士】
田中様、先日お預かりしました資料で、非常に重要な事が判明しましたので事務所まで起こしいただけませんでしょうか。

【依頼者】
分かりました。明日2時にお伺いいたします。

 

【税理士】
それで結構です。

【依頼者】
おじゃまします。昨日お電話いただきまして。

【税理士】
どうぞ、こちらへ
わざわざお越しいただきまして申し訳ありません。
先日お持ち頂きました戸籍謄本等を拝見させて頂いて重大な事実がありましたので作業を進める前にお伝えしておこうと思い、本日お越しいただいた次第です。
それは何かと申しますと田中様とお父様の間には養子縁組の届け出はありませんので、相続人とはなり得ません。また、お父様にはお母様以外の方との間に子を儲けられておりその子を認知しておられます。

【依頼者】
え、それはどういう事ですか。
私が、美智子と結婚したのは、事実ですし、田中の姓を名乗っているのも事実ですし、父親や、周りの者はすべて養子として接してくれていましたよ。

【税理士】
戸籍謄本には美智子様と結婚された時に妻の性を名乗る旨の届け出がありますが、お父様との間の養子縁組の届け出の記載はありません。ゆえに、相続人としての資格はありません。

【依頼者】
それでは、実質的に会社を切り盛りし、業績を上げてきた私の人生は何だったのですか。
私には、一銭の相続も認められないのですか。

【税理士】
法律的には、その通りです。
相続については、奥様の姉妹と認知された子供様とよく協議され、方針が決まれば、またご連絡ください。

【依頼者】
分かりました。妻とよく相談して後日、ご連絡いたします。

 

その後、相続人等の間で何とか遺産分割協議が成立し、無事申告納税ができましたが、相続には、いろいろ複雑な事情が絡み大変な事がある事例でした。
皆様には該当しないだろうが、一度戸籍謄本等を確認されたらいかがでしょうか。